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2014年5月の記事

2014年05月15日

201:中央区の町並 

中央区に住んで12年になりました。銀座から一駅という立地でありながら引っ越してきた頃は昭和初期に建てられた住宅が建ち並び、下町風情が色濃く残るエリアでした。しかし、近年それら古い住宅の多くが解体され、街の景観は一変しました。長い年月を経てこの地にあったものが突然無くなると悲しい気持ちになります。それは単なる喪失感からくる悲しさではありません。

これまで幾つもの住宅を設計させて頂いてきましたから、住宅やそれらの集積によって形成される町並を見る目は人一倍厳しいとは思いますが、近隣に新たにできた町並みは無惨としか言いようがありません。時を経ることで熟成されるように魅力を増す住宅が理想の住宅だと思いますが、古い建物が解体された後に出来上がった建物の多くがそれとは対極的に、一時の経済性が際立って優先された残念な住宅です。そのような建物はできあがったばかりでありながら短命さすら感じられます。近年の住宅の平均寿命はわずか26年と言われています。長く残ったものを壊してまでも作られたものから短命さが感じられた時に生じる感情は喪失感から来る悲しさではなく悔しさです。

奈良県五條市には正確な建造年が判明している民家としては日本最古の住宅と言われる栗山邸があります。400年以上もその地に存在し、重要文化財に指定されながら現在も栗山家が住まわれています。これまでに地震があり、水害があり、幾度となく台風による被害も受けたはずです。木造ですから火に弱く、五條市では大火も経験しているにも関わらず現代にまで残ってくれています。さらには太平洋戦争の時代に奈良は大規模な空襲すら経験していますから、この住宅が残ったことがいかに奇跡的なことか表現しきれません。栗山邸を前にするとその威厳からは残ろうとする意地すら感じられます。400年の間に経済状況も大きく変動し、何代にも渡って家系を維持することすら非常に困難であったはずですから、そんな困難を乗り越えて、日本の文化財を住まいながら継承されている栗山家のような方やその建物を正しく評価し、賞賛し、サポートする仕組みがあると良いと思う一方で、古いものが残されてきたエリアに残念な建物を作ることを厳しく制する仕組みも必須だと思います。

もちろん、古い建物を維持管理する大変さも想像以上に困難なものだと思われます。しかし、一度壊してしまうと永遠に取り戻すことのできない価値があることも事実です。万が一それを壊して新たに建物を建てるのであれば、それなりの責任を負う覚悟が必要です。

株式会社PLAN DO SEE(http://www.plandosee.co.jp)が日本各地で行っている古い料亭を活用するプロジェクトや、株式会社庵町家ステイ(http://www.kyoto-machiya.com)が行っている町家を再生させるプロジェクトを筆頭に、井藤昌志氏のアトリエを兼ねた松本のLABORATORIOや、岐阜の陶芸家である安藤氏が運営するギャラリー百草などからは古い建物の魅力を最大限に活かした例として学ぶべき点が多いと感じています。

ただただスクラップ&ビルドを繰り返すのではなく、今あるものの価値を見いだし、その価値を増幅させることもこれからのモノ作りに必要な能力だと考えています。

建築やモノを生み出すことを生業としている身としては、生み出したものを一日でも長く残す責任があることを認識し、それを実現する為に尽力しなければ、と近所の無惨な町並みを眺めながら思う今日この頃です。

下の写真は五條の栗山邸です。

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