育児も家事もがんばっているのに、産後クライシスがこじれるのはなぜか? - Father's Eyes

2013年11月20日

育児も家事もがんばっているのに、産後クライシスがこじれるのはなぜか? 


 産後クライシスという言葉が話題になっている。産後、夫婦の愛情が急速に冷め切ってしまう現象のことをいう。

 そして、産後クライシスによる、妻から夫への愛情の低下を防ぐには、夫の育児参加が重要であるという指摘がある。しかし、本当にそんなに単純なものなのだろうか。

 ついでにいうならば、そもそも「産後クライシスを回避するために、育児をする」というロジックもいかがなものか。本末転倒な感じがする。そんな動機で育児をしてくれて、妻は複雑な気持ちにはならないのだろうか……。

 

 あらためて先ほどの指摘の根拠を見てみると、夫への愛情を失わなかった妻は、「夫が育児に理解があり積極的である」という認識が多いというアンケート結果である。たしかにそこに相関はある。

 しかし実際に多くの母親の声を聞くと、「うちの夫はイクメンです!」という母親の、「イクメンの基準」にはかなりのばらつきがある。客観的にはかなりのイクメンに見えても、「うちのはまだまだ」という厳しい評価をしている母親がいる一方で、「週末に子どもとめいっぱいあそんでくれるだけで、十分イクメン!」という母親もいる。「うちの夫は育児に積極的である」という認知自体が非常に主観的で、幅が広いのだ。

 

 では逆の因果関係は成り立たないだろうか。夫のことを愛していると思っている妻ほど、夫の育児姿勢に高評価を与えているということはないのか。「夫が育児に理解があり積極的である」から夫への愛情が冷めないのではなく、夫への愛情が冷めないから「夫が育児に理解があり積極的である」という評価を夫に与えているのではないか。

 

 かつて、雑誌に掲載するために、インターネットで母親を対象にしたアンケートをとったことがある。すると興味深い結果が得られた。

 「夫はイクメンである」と思う母親と「夫はイクメンではない」と思う母親がちょうど半々。「夫はイクメンである」と思っている母親に、100点満点で夫への愛情を聞くと平均点は82点。一方、「夫はイクメンではない」と思っている母親がつけた夫への愛情点数は平均50点。30点以上も開きがあったのだ。

 卵が先か鶏が先かという議論ではある。

 しかし、育児や家事をやってもやっても認めてもらえない父親が多数いる一方で、実質的にはたいしたことはしていないのに妻からイクメンであると思われている父親も多数いる現実に照らし合わせれば、「夫を愛している度合いが高いと、夫の育児や家事に対する姿勢に高評価を与える傾向がある」という因果関係を結んだほうが、私の感覚値にフィットするのだ。

 

 その仮説の上に立脚するならば、産後クライシスを軽減するためにも、イクメンと認められるためにも、とにもかくにも大切なのは、妻から愛されることなのだ。それが育児・家事をどれだけしたかということよりも大切なのだ。

 妻から愛されるためにまずいちばんにしなければならないことは何か。

 妻を1人の女性として愛することである。1人の人間として敬うことである。

 妻を1人の女性として愛し、1人の人間として敬い続けるために必要なことは何か。

 妻が妻でいてくれることを、「当たり前」だと思わないことだ。

 

 私がこれまで聞いてきた父親たちの話からすると、産後クライシスをこじらせてしまっている夫に共通するのは、妻を「母親」としか見られなくなっている夫なのである。「やってもやっても認めてもらえない」と嘆く夫は、「母親としての妻を、父親としてサポートする」という意識になってしまっていることが多い。そういう気持ちでいくら育児・家事をがんばっても、産後クライシスは軽減できないだろうと私は思うし、実際にうまくいっていない。

 でも、妻を愛していれば、1人の人間として敬っていれば、妻が大変そうなときには自然に体が動くし、いたわりの言葉が出るはずだ。それは心から発せられる行動であり言葉である。妻の心にもまっすぐに届くはずだ。

 

 「産後クライシスを回避するために」とか「熟年離婚にならないために」とかいう動機ではなく、純粋に、妻のことが好きだから面倒な家事もやるし、子どものことが好きだから育児もする。そんな父親でいたいと私は思う。

育児・教育ジャーナリスト おおたとしまさ

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